コンタクトセンター

コールセンターの指標「稼働率」の重要性とは?チェックポイントや適切な管理方法

  • ProCX編集部

    NTTマーケティングアクトProCX

    ProCX編集部

コールセンターの指標「稼働率」の重要性とは?チェックポイントや適切な管理方法

コールセンターの業務効率を測るための指標の一つが「稼働率」です。これは、オペレーターが勤務している時間のうち、どれだけの時間を実際の顧客対応に充てているかを示す指標です。

しかし稼働率は「高ければ高いほど良い」というわけでもありません。稼働率が低すぎると人件費の無駄になり、高すぎるとオペレーターの負担が増え、離職率が上がるリスクも。適正なバランスを保つことが、サービスの品質向上や安定した運営につながります。

そこでこの記事では、稼働率の正しい計算方法や適正な数値の目安・適切な管理方法について詳しく解説します。

コールセンターの稼働率とは?計算方法や占有率や応答率との違い

コールセンターの稼働率とは?計算方法や占有率や応答率との違い

稼働率とは?

コールセンターの運営において、「稼働率」という指標は非常に重要です。稼働率は、オペレーターが勤務している時間のうち、どれだけの時間を実際の顧客対応に充てているかを示します。単に労働時間の長さを示すのではなく、効率的に業務が行われているかどうかを測る指標として活用されているのです。

例えば、オペレーターが1日の勤務時間の中で、電話の通話時間・通話中の保留時間・通話後の事務作業(後処理時間)・メールやオンラインチャットへの返信などに費やした時間が多ければ、稼働率は高くなります。一方で、待機時間が長かったり、システムトラブルなどで顧客対応ができない時間が増えたりすると、稼働率は低下します。

稼働率の計算方法は?

稼働率は、以下の計算式で求めることができます。

稼働率(%) = 顧客応対の時間 ÷ 勤務時間 × 100

例えば、このように算出します。

【日ごとの稼働率の算出】 オペレーターの1日の勤務時間が8時間(480分)だとします。 そのうち6時間(360分)を顧客対応に費やしていた場合、1日の稼働率は(360 ÷ 480)× 100 = 75%となります。

【週ごとの稼働率の算出】 オペレーターが1週間(5営業日)で勤務する時間が合計40時間(2400分)だとします。 そのうち、30時間(1800分)を顧客対応に費やしていた場合、1週間の稼働率は(1800 ÷ 2400)× 100 = 75%となります。

【月ごとの稼働率の算出】 オペレーターが1か月(20営業日)で勤務する時間が合計160時間(9600分)だとします。そのうち、120時間(7200分)を顧客対応に費やしていた場合、1か月の稼働率は(7200 ÷ 9600)× 100 = 75%となります。

この指標は、個々のオペレーターだけでなく、コールセンター全体の運営状況を把握するためにも活用されます。コールセンター全体の稼働率を算出し、一定期間ごとの稼働率を分析することで、業務の効率化や適正なシフト管理につなげることが可能になります。

稼働率の重要性は?

コールセンターの稼働率は、単純に高ければ良いわけではありません。

稼働率が高すぎると、オペレーターが十分な休憩を取れず、業務の質が低下する恐れがあります。また、ひとりのオペレーターの稼働時間が多いと、それだけそのオペレーターが業務に集中しているということになり、品質の低下が生じる可能性があります。各オペレーターによって稼働率に大きな差がある場合、オペレーターのスキル差が生じている可能性も。

そのため、高すぎず低すぎず適切な稼働率を保つことが大事です。稼働率の維持のためには、各オペレーターの業務負担が均等になるようにシフトを調整したり、必要に応じてシステムの導入などを検討したりすると良いでしょう。

占有率や応答率との違い

「稼働率」と似た指標に、「占有率」や「応答率」があります。それぞれとの違いを確認しておきましょう。

占有率との違い

「占有率」は、オペレーターの勤務時間のうち、実際に顧客対応に当たっていた時間の割合を示します。一方、「稼働率」には、通話やチャット対応だけでなく、保留時間や通話後の事務処理時間なども含まれます。

応答率との違い

「応答率」とは、コールセンターにかかってきた電話のうち、オペレーターが実際に対応できた割合を示す指標です。これは、オペレーターがどれだけの電話を取れたかを測るもので、稼働率とは異なる観点の指標といえます。稼働率が高くても、コール数が多すぎて応答しきれない場合は応答率が低下することもあります。

稼働率の適正値・チェックポイントと問題点

稼働率の適正値・チェックポイントと問題点

稼働率の適正値

コールセンターの運営には適切な稼働率維持が重要ですが、どの程度の稼働率が良いのでしょうか?また、どの程度の稼働率だと良くないでしょうか?一般的なコールセンターでは、以下の数値を基準にできます。

・70%未満:人員体制の見直しが必要 これは適正範囲を下回る数値で、オペレーターの稼働率が低い状態といえます。業務の割り当てが適切でない可能性が高いため、人員体制の見直しをおすすめします。

・80~85%:適正 安定した運営が可能な範囲といえます。この水準を維持すれば、効率的なコールセンター運用とオペレーターの負担軽減が可能です。

・85~90%:注意 業務効率は良いものの、オペレーターの疲労やストレスが蓄積しやすい状態といえます。状況によっては改善が必要です。

・90%以上:危険 90%を超えているのは危険水準といえます。オペレーターが常に業務に追われているような状態なので、疲労やストレスの増加、生産性の低下、ひいては離職なども懸念されます。

稼働率のチェックポイントは?

適切な稼働率を維持するために、以下の3つのポイントを定期的にチェックしてみてください。

【人員体制は適切か】 オペレーターの人数が適切かどうかを確認しましょう。業務量に対して人手が不足していると稼働率が上がりすぎ、逆に多すぎると稼働率が下がりすぎてしまいます。

【極端に稼働率が違うオペレーターはいないか】 一部のオペレーターばかりに業務が集中しているような状況では、ストレスや疲労が強くなったりパフォーマンスや生産性が低下してしまいます。離職リスクが上がる恐れも。こういった状況を防ぐためには、個人単位の稼働率を把握して、適切な調整を行うことが必要です。

【全体の稼働率が高すぎない・低すぎないか】 コールセンター全体の稼働率が、高すぎることもなく低すぎもしない状態、つまり適正範囲の80~85%に常に収まるように留意しましょう。オペレーターの負担を均等にし、安定した運営ができるようにするために、必要に応じて人員配置や業務分担の調整も検討してみてください。

稼働率が高すぎる・低すぎる場合の問題点は?

稼働率が高すぎたり低すぎたりすると、以下のような問題が発生する恐れがあります。

稼働率が高すぎる場合の問題点

コールセンターの稼働率が90%を超えるような状況が続くと、オペレーターがほぼ休む間もなく業務に追われることになります。この状態が長期間続くと、以下のような問題が起きるかもしれません。

【オペレーターの疲労やストレスが大きくなる】 休憩を十分に取れない状態で常に通話対応を続けることになると、精神的にも肉体的にも疲れてしまい、ストレスも多くなります。

【顧客対応の品質が低下しやすい】 疲労やストレスが溜まった状態では、集中力も続きません。対応のミスが増えたり、応対がぶっきらぼうになったり機械的になってしまったりなど、対応品質が低下して顧客満足度の低下を招く可能性があります。

【離職率が上がりやすい】 業務負担が大きすぎる職場環境では、オペレーターのモチベーションが低下し、結果として離職率が上がるリスクがあります。そもそも離職率が高いとされるコールセンターでは、この問題は深刻です。

【研修や教育が十分にできなくなる】 通話対応に追われる環境では、新人オペレーターが業務を学ぶ時間を確保しにくくなります。研修やフィードバックの時間が十分取れず、スキルをきちんと身につけられないまま現場に出ることになり、結果として対応品質に問題が生じることもあるでしょう。

稼働率が低くすぎる場合の問題点

稼働率が低すぎる状態が続くことも、コールセンターの運営にとっては問題です。稼働率が70%未満になると、以下のような影響が出る可能性があります。

【リソースや人件費の無駄使いになる】 必要以上にオペレーターがいると、一人あたりの業務量が少なくなり、リソースの無駄が生じます。その分人件費もかかるので、コールセンター全体の運営効率に悪い影響を与えかねません。

【オペレーターのモチベーションが低下しやすい】 忙しすぎるのも考えものですが、あまりに暇な時間が多かったり顧客対応の機会が少なかったりすると、業務に対するモチベーションを保つのは難しくなるでしょう。

【スキルが低下しやすい】 いくら研修などをしたとしても、実際の顧客対応の機会が少ないと、オペレーターのスキルは上がりません。また、もともとスキルのあるオペレーターでも、対応機会が減ると腕が鈍ってしまうこともあるでしょう。

【サービス品質の低下につながる】 通話対応の頻度が減ると、オペレーターの業務感覚が鈍り、対応スピードが遅くなったり、適切な対応ができなくなったりする可能性があります。その結果、顧客対応の品質が安定せず、クレームの発生リスクが高まる恐れもあります。

コールセンターの稼働率を適切に管理するための方法

コールセンターの稼働率を適切に管理するための方法

前項で解説したように、稼働率が高すぎたり低すぎたりすると、業務の効率が悪化し、サービスの質やオペレーターの働きやすさに悪影響が出やすくなります。稼働率を適正に維持するためのポイントを見ていきましょう。

ステータス管理をこまめに行う

稼働率を正確に割り出すには、「今、どのオペレーターが何をしているのか」をきちんと把握することが大事です。「未稼働」「稼働・入電待ち」「稼働・対応中」「休憩中」「小休止」などのステータスを管理して数値として確認できるようにしましょう。

ただし、あまりにも細かく管理しようとすると、かえってオペレーターの負担なることもあります。また、運営側の管理業務も煩雑になりかねませんし、手間がかかります。そのため、業務管理システムのレポート機能を活用するなどして、オペレーターの負担を最小限に抑えつつ、効率的に管理できる体制を作ることをおすすめします。

状況に合わせて人材配置を調整する

オペレーターの数が増えれば、対応能力は上がり顧客対応もスムーズになりますが、必要以上に多くの人員を配置すると人件費の増加や非効率な業務運営につながることがあります。逆に、人員が不足していると、オペレーター一人当たりの負担が増し、対応品質の低下や離職率の上昇を招く可能性があります。

コールセンターの稼働率を適正に維持するには、人員配置の見直しと調整が必要です。ステータス管理を活用し日々の数値を分析しつつ、業務量の変動に応じた柔軟な人員調整を行ってください。

稼働率が高すぎる場合には、オペレーターの増員を検討し、一人当たりの負担軽減を。稼働率が低すぎる場合は、シフト調整や短時間勤務の導入などで余剰人員が出ないようコントロールしましょう。

オペレーターへのフォローを充実させる

コールセンターの稼働率を適切に維持するためには、オペレーターのケアに注力し、働きやすい環境を整えることが大切です。以下のような方法を取り入れてみましょう。

【オペレーターの状態を把握し、必要なフォローを入れる】 管理者が現場の状況を把握し、必要に応じてすぐにサポートを行えるようにしましょう。あわせて適切なフィードバックを行うなど、フォローアップ体制を作ることも重要です。

【こまめにコミュニケーションを取る】 オペレーターとコミュニケーションをとる機会を意識的に設けましょう。他愛ない会話ができる関係性が作れれば、業務に関する悩みや不満も言いやすくなるので、業務の負担感や問題点などを自然とチェックできるようになります。

【1対1の面談をする】 業務がうまくいっていないオペレーターや新人は特に、個別のケアを行って早期に課題を解決することが重要です。そのために、定期的に管理者と1対1の面談を実施することをおすすめします。

【働きやすい環境を整える】 リラックスできるスペースを設ける・メンバー同士が交流できる機会を設けるなど、働きやすい環境作りも大切です。

このようにフォロー体制を充実させることで、オペレーターのメンタルもケアができ、稼働率が適正値から外れることを防げるでしょう。

非生産時間を教育や研修に活用する

コールセンターの入電数は、時間帯や曜日によって変動するもの。特に、繁忙期と閑散期では入電数に大きな差が生じることもが珍しくはありません。このようなとき、どうしても非生産的な待機時間が発生しやすくなりますが、この時間を有効に活用することで稼働率の最適化につなげることができます。

例えば、研修や教育プログラムを実施したり、業務に関する勉強会を行ったり、個別面談やフィードバックを行ったりするなど、オペレーターのスキルアップやモチベーション向上の機会を作ると良いでしょう。このように待機時間も上手に活用しさえすれば、コールセンター全体の生産性や顧客満足度アップのための時間にすることができます。

稼働率の適切管理にはシステムの導入やアウトソーシングも効果的!

稼働率の適切管理にはシステムの導入やアウトソーシングも効果的!

コールセンターのシステムとは?

近年では、多くの企業がコールセンター業務の効率化を目的としたシステムを導入しています。これらのシステムは、オペレーターの負担を軽減し、業務の効率化を後押しするものです。代表的なシステムを紹介します。

PBX

PBX(Private Branch Exchange)は、コールセンターにおける通話管理を担うシステムです。複数の電話回線を効率的に制御する役割をしています。このおかげで、外線と内線をスムーズに切り替えたり、オペレーター間での通話転送を行ったりすることが可能になります。

CTI

CTI(Computer Telephony Integration)は、コンピュータと電話を統合するシステムです。顧客から電話が入ると同時に、顧客情報をオペレーターの画面に表示することができます。オペレーターは通話開始直後から適切な対応ができるため、対応スピードや品質の向上につながります。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客とのやり取りを一元管理するシステムです。問い合わせ履歴や購入履歴などの情報を蓄積し、次回の対応時に役立てることができます。これにより、オペレーターは過去のやり取りを参照しながら適切な対応ができるようになります。

SFA

SFA(Sales Force Automation)は、営業活動の管理や分析を行うためのシステムです。コールセンター業務の中でも特にアウトバウンド業務を効率化するために活用されています。顧客とのやり取りやフォローアップのタイミングなどを管理できるようになるので、成約率を高める効果が期待できます。

FAQ

FAQは、よくある問い合わせをデータベース化し、オペレーターや顧客が簡単に情報を検索できる仕組みです。このシステムを導入すれば、オペレーターは問い合わせに対してスムーズで正確な回答できるようになり、対応時間が短くなります。また、顧客側も疑問や質問を自分で解決できるようになるので、問い合わせの手間がなくなります。

これらのシステムは、それぞれ単独で導入するだけでも一定の効果を得られますが、組み合わせることでより効果があります。例えばCTIとCRMを連携させると、顧客からの着信時に詳細な情報を自動で表示できるようになるので、よりスムーズな対応が可能になります。自社の課題に応じてシステムを導入することをおすすめします。

コールセンターのアウトソーシング

コールセンターの運営に課題がある場合、業務の一部または全体をアウトソーシングすることも検討してみてください。

アウトソーシング先のコールセンターは、その分野の「専門家」であるため、効率的な業務運営や稼働率コントロールのノウハウを持っています。自社で試行錯誤しながら管理方法を模索する必要がなく、短期間で効果的な運営体制を整えることが可能になります。

さらに、自社のリソースをコールセンター業務以外の重要な業務に集中させられるようになるので、企業全体の業務効率・生産性アップにもつながるでしょう。

まとめ

今回の記事でご紹介したように、コールセンターの稼働率は業務の効率化とオペレーターの働きやすさを両立するための重要な指標です。稼働率が低すぎればリソースや人件費の無駄、高すぎればオペレーターの負担増と、どちらもリスクを伴います。そのため、日々の数値を確認しながら、人員配置や業務の分担を適切に調整することが大切です。また、現状のコールセンター運営に問題を感じているのであれば、業務管理システムの導入やアウトソーシングの活用も視野に入れてみてください。

ProCX編集部

ProCX編集部

NTTマーケティングアクトProCX

ProCX編集部
コンタクトセンター運営や様々なBPOサービスを提供しているNTTマーケティングアクトProCXのノウハウを発信しています。

関連する資料

お気軽にご質問・ご相談ください