課題・背景
- お客様のニーズを把握し、保険商品やお客様サービスの改善に生かしたい
- コンタクトセンターの課題を把握し、オペレーターの応対品質や生産性を向上させたい
- VOC分析には専門的な知識が必要なため、自社だけではノウハウがなく、限界を感じていた
実施内容・導入の効果
- カスタマージャーニー作成から取り組むことで、CX一連における現状把握/仮説設定から実施
- 専門アナリストがコンタクトセンターの会話を分析し、VOCから課題を抽出
- カスタマーサポート改善に向け、具体的な施策実行(システム改修)まで進めることができた
概要
はなさく生命保険株式会社様(以下、はなさく生命様)は、2019年4月に業務を開始した新しい企業です。
保険商品そのものの価値では差別化が難しい時代であり、早期の認知度向上と、ブランドイメージ向上によるロイヤルカスタマーの獲得を目指したいという考えから、CX(顧客体験価値)向上に積極的に取り組んでいます。そのために、コンタクトセンターに集まったお客様の声(VOC)を分析し、お客様の要望を理解しようとしていました。しかし、自社だけでは解決できない課題があったといいます。
ご相談を受けたNTTマーケティングアクトProCXは、課題解決に向けて「CX向上ワークショップ」と「VOC分析・コンサルティング」のサービスを提供しました。はなさく生命の五十嵐様と松本様に、どのような取り組みを実施したのか、どのように感じたのかについて伺いました。
五十嵐 知香 様 (写真右から2番目)
はなさく生命保険株式会社 CS戦略部 課長
松本 明徳 様 (写真右)
はなさく生命保険株式会社 CS戦略部 課長補佐
前川 美波 (写真左から2番目)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX VOCサポートセンタ CXチーフコンサルタント
牛島 将喜 (写真左)
株式会社NTTマーケティングアクトProCX VOCサポートセンタ CXアナリスト
※部署名・役職は取材当時(2023年1月)のものです
「お客様が実際に言っていることは何だろう?」と疑問を感じながら分析していた
五十嵐様と松本様は、コンタクトセンターに集まった声を活用してCX向上に結び付けたいと考えていたものの、自社だけでは実現が難しいと感じていました。
私たちは、お客様の声を可視化して、どんな内容がどれくらい集まっているのかを把握しようと考え、分析を行っていました。具体的には、コンタクトセンターのオペレーターがお客様からの電話に応対した後に登録するCRMデータをもとに分析していたんです。
ただ、オペレーターがCRMに入力してくれるのは、「お客様がこういうことをおっしゃったら、きちんと記録しておいてね」とこちらで指定した内容です。そうすると結局、入力内容はこちらの知りたいことだけになってしまう。実際のお客様の声を把握しきれていないのではないかという不安がありました。
「お客様の生の声を生かした商品・サービスの提供」という目的にたどり着くためには、VOC分析についてそれなりの知見が必要です。自社だけではVOC分析のノウハウがなかったため、タッグを組める会社を探すことにしました。そして出会ったのが、NTTマーケティングアクトProCXです。前川さんに、「弊社のやりたいことはVOCを分析して、コンタクトセンターの応対品質向上はもちろん、会社全体のCX向上の取り組みの土台作りをすること。そのためにどう分析していくべきなのか、相談したい」と伝えました。
五十嵐様は、取り組みたいとお考えのことをストレートに話してくださいました。VOC分析をCX向上のための土台として活用することは、まさに弊社のミッションなので、最初から会話が弾みましたね。分析をどうするかももちろんですが、何のために分析するのか、どう活用していくのかという議論がとても盛り上がった記憶があります。そして、こちらからも「それなら、こういう風に取り組みませんか?」と具体的な提案がしやすかったです。
前川さんは、どのようにVOCを分析するかということだけではなく、課題解決に向けたコンサルティングも含めて提案してくれました。「この人となら、やりたいことが形になりそうだ」と感じましたね。
弊社はコンタクトセンター運営に関する知見があり、VOC分析後にどう改善したらいいかという検討や、施策の実行までサポートできるのが強みです。それが、五十嵐様と松本様が望んでいたことと一致し、良いスタートを切れました。
データの背景を理解することが大事。ワークショップや現場の声を踏まえた分析で、解決の糸口が見えた
はなさく生命様とNTTマーケティングアクトProCXは、「仮説設定」、「データ分析」、「改善施策の検討と決定」という一連の流れを、協力して実施しました。
最初に実施したのは、CX向上ワークショップです。「CXとは何か」、「CX向上のために何をしたらいいのか」といった講義の後、カスタマージャーニーマップを一緒に作成しました。カスタマージャーニーでお客様の行動を可視化し、それを元に「お客様はどこで、どんな疑問を感じてお問い合わせをしているか?」について議論していただきました。
そこで出てきた仮説が、「保険は言葉が難しくてよくわからない」、「自分に合った契約がわからない」といった声が多いのではないか?という内容でした。仮説を立てたことで、私たちも分析すべきポイントや必要性を理解し、はなさく生命様としても、「さぁ、実際はどうかな?」という動機付けがされたのではないかと思います。
私は分析者の立場ですが、データの背景の理解も大切にしています。実際に、コンタクトセンターの現場見学も行い、現場担当者の方にヒアリングもしましたし、実際に使われているマニュアルも受け取り読ませていただきました。あれは膨大な量でしたね。ですが、現場の方のお話を聞いたり、マニュアルを一生懸命に読み込んだことで、業務への理解を深められました。
分析だけで終わらず、改善まで取り組んでいくには、現場の方々との意見交換が重要だと思っています。「こういう風に課題を解決していったらいいんじゃないでしょうか」と、活発にディスカッションができたことが、はなさく生命様に向けてカスタマイズしたサービスを提供できた大きなポイントだと思っています。
重視しているのは、データから見えない目的や背景をどれだけ踏まえていけるかということです。データだけ見ていても仕方ない。CXに取り組む背景や、お考えをきちんと理解してこそ、価値のある提案ができると考えています。そのためのワークショップや、現場でのヒアリングでした。
タッグを組むからには、その会社にしか出せない意見を聞かせてほしいですからね。その点、データがどうなっているかだけではなくて、目的や背景までしっかりとコミュニケーションがとれたのは本当に良かったです。
その後はデータ分析です。テキストマイニングを用いて、お客様からのお問い合わせの内容を定量化しました。まずは全体のお問い合わせ傾向を定量化することで全体把握し、そこから個別課題へと進めていくというステップを踏みました。
データ分析によって、お客様とのコミュニケーションの全容が定量的に見えてくると、困りごとを解決するにはどうするべきかをデータに基づき検討ができるようになりました。
分析後の改善策検討の際は2つの観点から考えました。
1つ目は「根本原因の解消」。保険のサービス内容や仕組みを変えて、困りごとが起こらないようにする考え方です。
2つ目は「カスタマーサポートの強化」。お客様からの問い合わせがあった際に、コンタクトセンターでスムーズに応対して解決し、CXを引き上げる方法です。
「根本原因の解消」については、早期の対応は難しいものの、分析結果を元に社内関係部署への提言ができるようになりました。そして、私たちのメインミッションである「カスタマーサポートの強化」を本格的に進めるため、具体的な対策をNTTマーケティングアクトProCXと一緒に考えることにしました。
「どうしたらよりお客様のCXが高まるカスタマーサポートにできるのか?」
さらなるデータ分析で明らかになった理由と、改善に向けたアクションとは
カスタマーサポートの強化によるCX向上は、NTTマーケティングアクトProCXが強みとしている領域です。コンタクトセンターの応対品質を改善するため、さらに突き詰めて分析を行いました。
カスタマーサポートにおける課題抽出に向け、お客様のお問い合わせ傾向とオペレーターの通話時間や保留時間に関するデータを活用して分析を行いました。分析は何かと何かのデータを比較して初めて課題が見えてくるので、保険業界の一般的なデータと比較しながら、広い視点での分析も行いました。そうした分析の結果、保留や折り返し・追加案内の対応によってお客様をお待たせしている時間が長いお問い合わせがあることが明らかになりました。
保留や折り返し・追加案内が多いこと自体は、データを見ればわかります。でも、それだけでは社内を動かすことはできません。例えば保留については、「どういう理由で保留をしているのか」と掘り下げて分析し、「オペレーターの情報検索の仕組みが原因ではないか(すぐに確認できる情報の範囲を広げる必要があるのではないか)」というところまで考察してもらえたので、改善に向けてのアクションにつながりました。現場担当者との議論で、お問い合わせにスムーズに対応できる仕組みを作ることが決まったのです。今後、システム改修を行う予定です。
それ以前にも、システム面の課題をうすうす感じてはいました。でも、システム改修には膨大な費用と手間がかかりますから、業務改善のためとはいえ、社内を説得するのは難しいです。今回の分析によって、お客様やオペレーターが困っているということをデータで裏付けられたので、ようやく改善に踏み込めました。
分析結果が、的を射ているんですよね。コンタクトセンター運営のことをよく知っている人たちが分析してくれるからだと思います。また、個人的には何が目的でどのデータを切り取って見ているのかや、何が母数でどういった割合なのかといった数字も気になる部分だったのですが、非常にわかりやすく論が通っていた点も良かったです。
分析後の改善に関しては、もちろん弊社も全力でサポートしますが、はなさく生命様が課題解決に取り組もうとする意志があるからこそだと感じています。五十嵐様と松本様が社内での推進力を持ち、改善に向けて動いてくださっている。そういう方々とタッグを組めていることが、すごく喜ばしいです。
業務理解の早さ、分析のクオリティの高さと、親しみやすさの両面が備わっているのが魅力
今回、NTTマーケティングアクトProCXのサービスを利用して、はなさく生命様がどう感じたかについて伺いました。
「お願いして良かった」と思っています。
ワークショップからデータ分析までの流れで課題が可視化されたので、優先的に取り組むべき要素をしっかり把握できました。さまざまな分析テクニックを駆使して、全体把握だけでなく個別課題の深掘りまでやってもらえたことも良かったです。
分析者はコンタクトセンターのことは熟知していても、保険会社の業務には詳しくない状態からスタートしたはず。それでも、短期間で弊社の業務を理解して、分析してくれました。思っていた以上に分析の品質が高かったので、「こんなものが出てくるなんてすごい!」と驚いたし、感動しました。
分析のさらに先、課題解決に向けた提言も的確でした。幅広い業界の分析をしてきた経験に基づいて導き出しているからでしょうね。いろいろなソリューションを持っている会社ですが、それを押し付けない。データを元に、お客様の満足度を上げるためのソリューションを適切に提案してくれたのが良かったと感じました。
なおかつ、前川さんと牛島さんが親しみやすくて、コミュニケーションをとりやすかったのが良かったですね。本当に感謝しています。
「コンタクトセンターをCX向上の起点にする!」
そのために、DXやEXに取り組みたい
はなさく生命様は、今後はさらにVOC分析を強化していきたいとお考えです。
今回の分析結果は、2023年度に向けてどう改善していけばいいかを考える材料になりました。これは大きな変化です。「改善したい」って思っているだけではなくて、定量的なデータによる裏付けがなくてはいけないんですよね。
目標は、コンタクトセンターを起点としてVOC分析の結果を社内に発信し、改善を提案していくことです。さらに、カスタマーサポートでお客様との関係を強化して、ロイヤルカスタマーの醸成につなげたいと考えています。
そのために重視しているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)とEX(従業員体験)。
DXとしては、お客様がコンタクトセンターに問い合わせなくても自己解決できるように、Web上でのコミュニケーションを充実させていきます。EXとしては、今回のシステム改修のように、仕組みを変えていくことでオペレーターの負担軽減を目指します。
はなさく生命様の素晴らしいところはたくさんありますが、その中でも印象に残ったのがEXへの取り組みです。一般的には「応対品質を向上させるなら、オペレーターをもっと教育すればいい」という方向性に行きがちですが、はなさく生命様はオペレーターの満足度を上げたいと考えていますよね。
そうなんですよ。オペレーターは緊張しながら応対をしているわけだから、緊張の負荷を軽減するためには、ちゃんとフォローしないといけない。システムを改修したり、業務を改善したりすることで、それが実現できればいいと考えています。約50人のオペレーターがいますが、その全員に気持ち良く仕事をしてもらって、「この会社で働けて良かった」と思ってもらいたいんです。働くメンバーにそう思ってもらえれば、その気持ちは声に乗って、電話の先のお客様に届くはず。それによって、お客様にも「この会社を選んで良かった」と思っていただけるので、結果的にCX向上につながります。こうしたEXやDXの取り組みも含めて、NTTマーケティングアクトProCXには引き続き協力してもらいたいですね。
今後も、協力して課題解決に取り組むパートナーでありたいと考えています。データは常に変動しているので、定期的に分析して、それを踏まえた上で次にどうしていくべきなのかというご提案を行っていきます。
はなさく生命様のCX向上を目指す取り組みにおいて、根拠となるデータ分析から、その先の改善提案まで、弊社はこれからも伴走していきます。よろしくお願いいたします。
お客様情報
はなさく生命保険株式会社 日本生命グループの一員として、2019年4月に業務を開始。時代の変化に合わせた新たな価値提供を通じ、社会課題の解決や保険業界の発展に貢献していくという企業理念を掲げている。 |