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CX用語集 ③ジョン・グッドマン編

CX用語集 ③ジョン・グッドマン編

CX the How

2022.12.16

  • ジョン・グッドマン

CX用語集 ③ジョン・グッドマン編

CX(顧客体験)をより深く理解するためには、直接の顧客接点であるカスタマーサービス領域だけではなく、マーケティング領域やデータ分析領域などさまざまな分野の基礎知識が必要となります。 COEの連載記事「CX用語集」では、CXを語るシチュエーションでよく使われる「CX用語」を基礎から応用まで、多岐にわたりご紹介。

第3回目は、顧客満足度の改善や向上を考えるうえで必ず通る「グッドマンの法則」で知られる、ジョン・グッドマン氏による「CX用語」をご紹介します。

作者:ジョン・グッドマン 翻訳:森泉千穂・浅野美奈

サービス
辞書を見ると「困っている人を助ける、人に仕える」などの意味があるが、ビジネスでは一般的に、商品の販売後に生じる顧客の質問や苦情への対応を指す。

カスタマーサービスとして顧客対応に就くフロントスタッフによるサービス以外にも、最近ではチャットボットなどAIによる顧客対応もサービスとして含まれる。さらに、購買前の消費者からの質問への対応、ウェブサイトにおけるセルフサービスのアプリなども含まれるだろう。

顧客体験全体におけるサービスとなると、消費者が商品やサービスを購入する前の段階で適切な商品を選ぶ手助けをする、商品を手許に届けるまでのサービス、そして購入後も、顧客がわざわざ問い合わせなくても済むようにする「能動的なサービス」のアプローチなど、顧客体験の起点から完了まで、カスタマージャーニー全体にわたって顧客を支援し続けることが、企業の競争力にもつながると考えられている。これは企業として取り組むべきサービスとして「戦略的サービス」と位置付けている。

一方、例えば自動車ディーラーには販売後の顧客に予防整備や故障の修理などサービス部門が担当するもの、これは従来からのサービスだが「戦術的サービス」と位置付けることができる。
サービスリカバリー
トラブルや疑問など顧客の困り事(痛点)を解決することで、企業に対するロイヤルティや信頼を回復(リカバリー)させるという概念とアプローチを指す。具体的には、次の6ステップで構成される。

  1. インテイク(受け入れ):顧客からの商品やサービスに関するトラブルや疑問を受け付けることだが、顧客が助けを求めるように企業側から促し、問い合わせし易くする「動機付け」も重要な要素である。CCMC社の調査によると、顧客にとって深刻なトラブルや疑問があっても企業などにコンタクトするのは半数以下だということが分かった。企業側としては、顧客のトラブルを把握できなければ解決できないので、顧客がコンタクトし易い環境の整備が求められる。

  2. 顧客の気持ちを受け止める:トラブルに遭った顧客は、不快に感じたり、動揺している可能性が高い。論理的な解決策を伝える前に、顧客の気持ちを受け止め、落ち着かせた上で解決に向けた話し合いを始めることが大切だ。

  3. アセスメント(要件内容の把握):ロイヤルティを回復させるためには、顧客のニーズを十分に理解する必要がある。このためには複数の質問を投げかけて確かめる作業が発生するが、顧客の言い分を中断することなく会話を進めなければならない。

  4. 解決:顧客が困っている状況を解決できる具体的な計画を立てる。複雑なトラブルであれば、状況に応じて3~5つの代替案を提示することも必要になる。解決に向けて交渉するには「柔軟な解決の余地(Solution Space)」(※)の考え方を駆使して顧客にとってのベストな解決策へと導くべきだろう。

  5. 約束:顧客と約束した内容や時間は全て記録し、約束通りに実行できるように、顧客との約束を追跡できる仕組みが必要になる。

  6. フォローアップ:深刻なトラブルに対しては、顧客が満足していることを確認するためにフォローアップによる確認や連絡を常に取る必要がある。それほど深刻ではない場合でも適宜フォローアップすることが望ましい。


(※)柔軟な解決の余地:裁量を発揮できる許容範囲
能動的サービス(プロアクティブ・サービス)
顧客からの問い合わせがくる前に、または顧客が求めているニーズに気づく前に、企業側からサービスや商品を提供すること。能動的サービスには具体的に以下の3つのタイプが考えられる。

  • 日常的に利用する商品やサービス:ペットフードのオンラインショップChewy社では毎月ドッグフードを届ける定期購入サービスを行なっているが、発送前に顧客への確認メールを送る。同時に顧客のニーズを考えてペットのおもちゃや特別商品を案内している。クロスセルにつながる機会にもなっている。


  • 突然の変更に対応可能な確認サービス:例えば、航空便の出発時間や到着時間、荷物の配達日等々、突然変更になる可能性があるものに関して、メールやテキストメッセージなど顧客が簡単に確認できるサービスを提供する。遅れずに時間通りに進む場合でも、前もって顧客と確認することで、安心感を与え、信頼感を高めることができる。企業が業務プロセスをきちんと管理しており、顧客とのタイムリーなコミュニケーションを大切にしているという企業姿勢を伝えることができる。


  • 商品やサービスの仕様や納期変更などの場合:商品やサービスの仕様や納期変更などについては、できる限り早い段階で、できる限り詳細な情報を顧客につたえるべきだ。重要な情報の提供を遅らせても誰の得にもならない。
DIRFT
Doing It Right the First Timeの頭文字を取った略語。「物事を最初に正しく実行する」という意味だが、企業の品質方針の対象範囲が商品やサービスからCXに拡大すると、商品やサービスの設計や企画、マーケティング、販売、製造、配送、オンボーディングなどにDIRFTを適用する必要がある。

顧客を困らせるトラブルや痛点の発生を最小限に抑え、顧客の期待に最大限応えられる状態を作り出す。CXを戦略的にマネジメントし、顧客満足とロイヤルティを最大化し、収益強化に結びつける。そのための品質概念としてCCMC社が開発したモデル。

DIRFTモデルを導入する場合、商品やサービスの設計や企画立案のプロセスが最も重要になる。企業が何を提供するかによって、顧客の体験が決まるからだ。
オンボーディング
顧客に提供する製品やサービスについて顧客を教育するプロセスを指す。本来は、乗船したばかりの人に船内を案内することで、乗客が迷子や不安にならないようにすること。新規顧客も最初は企業に対する信頼感が薄く、ロイヤルティも深まっていない。そのため、この期間のオンボーディングプロセスをしっかりマネジメントすることが非常に重要になってくる。

しかし、オンボーディングを効果的に運用している企業は少ないのが現実だ。おそらくその要因は、オンボーディングの担当責任者がいないことだろう。

オンボーディングの責任をセールス部門に託しても、彼らは顧客と契約を交わした直後から既存顧客に時間を割かない傾向にあり、十分に顧客を理解しようとせず顧客との関係を手放してしまっている。

ジョン・グッドマン

ジョン・グッドマン

1200以上の調査で企業のカスタマーエクスペリエンスを評価した経験を持つ、CXの第一人者。その経歴は、1970年代にホワイトハウスの依頼で実施した、全米の企業や政府における苦情対応の実態調査に始まる。調査の結果、消費者窓口の設置とフリーダイアル導入の大きな流れを生み出すに至った。独自の視点とデータに基づく実践的なコンサルティング手法は、フォーチュン100社のうち半数近くが採用している。

40年前に日本で紹介された「グッドマンの法則」は顧客の行動原理に基づくCXの可視化を促し、マーケティング分野等で今もなお原理原則として利用されている。さらに、彼の経験とともに進化を遂げ、「CX3.0🄬」「サービスリカバリー・パラドクス」「顧客離反リスク」「顧客損失リスク」等の実践的な理論に発展している。現在は、顧客のディライトやエンゲージメントに関わる研究に携わる。

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