CX用語集 ①カスタマーサービス編
CX the How
2022.12.16
CX(顧客体験)をより深く理解するためには、直接の顧客接点であるカスタマーサービス領域だけではなく、マーケティング領域やデータ分析領域などさまざまな分野の基礎知識が必要となります。 COEの連載記事「CX用語集」では、CXを語るシチュエーションでよく使われる「CX用語」を基礎から応用まで、多岐にわたりご紹介。
まずは第1回目「カスタマーサービス」の現場で理解しておくべきCX用語からご紹介します。
作者:ジョン・グッドマン 翻訳:森泉千穂・浅野美奈
- 顧客満足度
- 顧客の期待がどの程度満たされたかを測定する指標。顧客へのアンケート調査で測定されることが多く、企業への満足度を、5点満点、7点満点、または11点満点のスケールで評価する。アンケート調査を実施せず、苦情件数等で満足度を把握している企業も多い。満足度は顧客の期待値と密接な関係にある。期待値が低ければ、サービスやパフォーマンスが並みレベルであっても、満足度が高くなる場合もある。
- エモーショナルコネクション
- 顧客とサービス担当者との間で交わされる基本的なやりとりにとどまらず、パーソナルなつながりを相互に作り出すことを指す。サービス担当者は、顧客との会話や表情から感情を読み取り、状況に応じた適切な対応を行う。顧客に対する共感や関心といった感情面の表現や、熱意や努力を惜しまない姿勢を通じて、サービス担当者の人柄が顧客に伝わる。効果的なエモーショナルコネクションによって、顧客の満足感や信頼感が強まる。
- カスタマージャーニーマップ
- 企業と顧客が触れ合う全ての接点(タッチポイント)と、顧客に関わる事業活動全体の流れをまとめたものを指す。まず顧客が商品やサービスを認知した時点に始まり、購買、利用体験、アフターフォローに至る起点から完了まで全てをカバーする。さらに、過去にその商品を使用したり、類似商品を使用して抱いた期待も含まれることがある。
カスタマージャーニーマップは、3つのレベルで作成できる。①顧客対応の主な流れをまとめる、②すべての顧客接点を含める、③さらに各接点で実行されるすべての出来事やサービス担当者の具体的な行為のレベルにまで分解する。企業内の担当者や部署ごとの詳細なプロセスを見える化することで無駄なプロセスを見直すことも可能になる。
- ペルソナ
- 顧客をより深く理解する目的で、性別・年齢・人種等の人口動態レベル、所得レベル、心理学的な要素などを使って顧客を分類し、セグメント化したものを指す。顧客の購買額や契約金額などの金銭的価値よりも、金銭とは無関係な要素を重視することが多い。
カスタマーサービスの観点からみると、顧客のITリテラシー(技術者レベル、一般的レベル、ITには全く不慣れなレベルなど)、サービス担当者との関わりを求めるかどうかといった性格の違い(無駄ばなしを嫌い簡潔に終わらせたい、詳細で懇切丁寧な説明を期待する、できれば手伝ってもらいたい等々)で分類することが必要になってくる。
- 痛点(Points Of Pain)
- カスタマージャーニーマップ上で顧客が遭遇するトラブルや疑問のことを指す。適切に対処しなければ大きなトラブルに発展し、顧客の離反につながる可能性がある。
顧客が混乱し不安に感じている時点で、企業から見れば軽微な問い合わせであっても、痛点であると定義される。取るに足らない痛点であれば、それが直接的な原因となってロイヤルティを下げたり顧客の離反を招く可能性が低く見えるかもしれないが、そのような痛点の数が増えれば離反リスクにつながる。
- MOT(決定的な瞬間)
- 顧客のロイヤルティに重大な影響を与える決定的な瞬間のこと。カスタマージャーニーマップ上の痛点のうち、MOTにあたるのは6~8個程度であることが一般的。また、ペルソナや顧客のセグメントによってMOTが異なる場合がある。例えば、スピードを重視する多忙な人と話好きな人とでは期待値が異なり、MOTにも影響する。
- シェア・オブ・ウォレット(財布内シェア)
- 顧客のロイヤルティを測る指標の1つ。自社の商品やサービスが属するカテゴリー(例えば、化粧品、衣料等)に対して1人の顧客が支出する総額を母数に、自社と競合他社への支出の割合を比較したもの。 この概念は、ドッグフードのように差別化しにくい商品の場合特に重要である。通常、1番手の企業のシェアは60%程度、2番手は20~30%、3番手はごくわずかである。
単純な平均購買金額はロイヤルティを測る指標にはならない。
- 顧客の声(VOC)
- 顧客の要求と期待、実際の顧客体験に対する満足度等を収集し、解釈し、報告するプロセス全体を指す。具体的には、アンケート調査、顧客からの苦情や問い合わせ等からVOCを得ていることが多い。さらに、生産プロセスやサービスプロセスでのエラー、顧客からの返品も一種のVOCと言える。
- (ネット上の)クチコミ
- レビューサイトやオンラインコミュニティ、ソーシャルメディア等に投稿された、顧客の推薦文、フィードバック、コメント、要望など。その内容は、星の数での評価(星1つ~星5つ)や、「いいサービスだった」という短い文章から、長文のストーリーまである。我々の調査結果では、ストーリーの完成度が高く長文のものほど、影響力が大きくなる
- (伝統的な)クチコミ
- ある企業とのやりとりで顧客が体験したことやその感想を、友人、家族、仕事仲間等に伝えること。詳細で具体的な話は、ネットで見られるレビューよりも説得力があり、マーケティングにおいてより大きなインパクトを与える。ネガティブなクチコミの方が広く拡散される傾向にある。CCMC社が2020年に米国で実施した「全国消費者不満足調査(Rage Study)」では、好ましい体験よりも悪い体験の方が3倍も多くクチコミされていることがわかった。
クチコミは、新規顧客を獲得するための最も効率的な仕組みと言える。顧客からポジティブなクチコミを引き出すことに成功している企業は、通常、新規顧客の少なくとも7割をクチコミから獲得している。
ジョン・グッドマン
1200以上の調査で企業のカスタマーエクスペリエンスを評価した経験を持つ、CXの第一人者。その経歴は、1970年代にホワイトハウスの依頼で実施した、全米の企業や政府における苦情対応の実態調査に始まる。調査の結果、消費者窓口の設置とフリーダイアル導入の大きな流れを生み出すに至った。独自の視点とデータに基づく実践的なコンサルティング手法は、フォーチュン100社のうち半数近くが採用している。
40年前に日本で紹介された「グッドマンの法則」は顧客の行動原理に基づくCXの可視化を促し、マーケティング分野等で今もなお原理原則として利用されている。さらに、彼の経験とともに進化を遂げ、「CX3.0🄬」「サービスリカバリー・パラドクス」「顧客離反リスク」「顧客損失リスク」等の実践的な理論に発展している。現在は、顧客のディライトやエンゲージメントに関わる研究に携わる。
40年前に日本で紹介された「グッドマンの法則」は顧客の行動原理に基づくCXの可視化を促し、マーケティング分野等で今もなお原理原則として利用されている。さらに、彼の経験とともに進化を遂げ、「CX3.0🄬」「サービスリカバリー・パラドクス」「顧客離反リスク」「顧客損失リスク」等の実践的な理論に発展している。現在は、顧客のディライトやエンゲージメントに関わる研究に携わる。